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好きな事を好きな様に書く日記です

追悼・山本文緒様 2023年読書記録

 

無人島のふたり 120日以上生きなくちゃ日記」

 

room.rakuten.co.jp

山本文緒さんが亡くなられたことは報道された時から知ってはいたのですが、「最期の日々」を綴ったこの本を読むのがなんだか寂しくてずっと遠ざけていました。

が、意を決して昨年、読みました。

読んで良かった気持ちと同時にめちゃくちゃに揺さぶられたので、去年の読書ログとしてここに記します。

 

私の山本文緒さんとの出会いは「眠れるラプンツェル」で、専業主婦と12歳の少年の恋愛っていうなかなかにギョッとする内容で、なのに物語はずっとものすごく『静か』で、なんだかすごい本を読んでしまった…っていう後味の作品でした。

そのなんとなくダウナーな感じに根暗な私はすごく共感して、それ以降の作品、特にエッセイが大好きで何冊か持っています。

今回この「無人島のふたり」を読んだ後改めて「再婚生活」を読んだり「そして私は1人になった」を読んだりして、そのタイトルから夫を若干不安にさせたりもしましたが、やっぱりどれも面白かったです。

 

エッセイはご自身のことを書いているのにも関わらず、語り口はいつもどこか他人事っぽくてサラッと簡潔で読みやすく、この「無人島のふたり」もそんな感じです。

なのに、というか、だから、というか、病が発覚してからの日々を山本さんと追体験している様な感覚になって、特に最期の方のみるみる病状が悪化していく様子は本当に辛くて寂しい気持ちになりました。

遺作だとわかっていても、まだ早いよ!行かないで!と祈りながら読む様な。

 

一方で、読み終わって猛烈に羨ましい…!と思えてしまって。

やりたいことを沢山して、望まれて作品を書いて、身辺整理をして献身的な夫に見送られる最期を、とても理想的で良きものにも感じてしまった。

夫になら私の葬式も子育ても任せられるから先に逝きたいな…なんて、そんな不謹慎なことを考えてしまったり。

 

*ここから先は更に内容に触れますので未読の方はご注意下さい。

 

 

ご自身の死に直面した場面で

「うまく死ねますように」「うまく死ねそうです」

こんな突き刺さる様なフレーズがさらりと出て来てしまうのも流石の山本文緒さん。

かと思うと「もうすぐ別れの日が来る。別れたくない。」と、少し涙が出てしまいそうな夫さんへの気持ちを率直に書いたりする。

「死にたくない、とジタバタするのは違うが、何もかも達観出来る訳ではない」という言葉に、きっとそんな感じなのだろうな、とものすごく腑に落ちた。

 

SNSでは、時々誰かの、回復を望めない厳しい闘病記を目にすることがある。

その方の文章が面白かったり共感したりして応援したい気持ちになって、SNSを日々見ていると、ある日ふと更新が途切れ、数日して復活したり、しなかったりする。

私はこの方の死を待っていたのだろうか、死を見届けるためにフォローしたのだろうか、と思うと何とも言えない気持ちになって、少し落ち込み、自己満足で手を合わせたりして、そして日々に埋もれていく。

それを書籍としてギュッと凝縮した形で・かつ山本文緒というプロの文章で体験して、結構な衝撃を受ける読書体験になった。

放置していたブログを、読書記録として再び更新しようと思うくらい。

 

とにかくすごい本だったので、是非いろいろな方に読んで欲しいです。